ふたつの瞳がプレーを凝視しているが、心はそこにないのがわかる。表情は苦痛に歪んでいる。視線はじっとプレーのある虚空を見つめているだけだ。落とした。落とした。敵の歓声。嬌声。ふたつのチームが何かに魅入られたように大逆転へと進行していく。その不可逆的な力のひとつの歯車となってしまっただけなのだ。自分のプレーがきっかけとなった逆転への相手方のドライブを眼にしながらコールドウェルの頭には虚空に浮かぶボールの映像、それが手にぶつかる感触、いつもと異なる生き物のような不思議な動きをしているという気がついたときには自分の知らない手に入っていた視覚が繰り返し浮かぶばかりだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿