2013年1月6日日曜日

金菊のレリーフ

ケンちゃんの家にもっていくために、モリエールに寄った。クッキーはだめだ。ケーキは留守だったときに困る。フルーツケーキのローフは切るのが面倒だしあそこは親の家と子供の家があるからわけにくい。結局、一切れずつのパウンドケーキのような種類が年賀の箱にはいったセットを購入した。シュークリームがレジの手前に山のように積んであった。食べたいと思った。お母さんにあげようか。ネズミかなにか、動物が入って食い散らかしたら嫌だしな。1つ買ってお母さんと分けよう。
 ケンちゃんの家に挨拶を済まして、実家に戻る。母に供える。半分こしような、といった母は、私はええわ、あんた食べな、といった。いいやん、もっと欲しかったいくつでも買ってきたらええんやし、と僕は言った。半分に割って母と一緒に食べた。母はあーおいしいなぁ、クレモナのもおいしかったけど、やっぱりモリエールのも美味しいなといって、二人で美味しい美味しいといってひとしきり食べた。それから母は、もっと食べたいけどおなかが悪なるとあかんからやめとこかな、そやけど食べたいな、でもやめといたほうがええな...といっていた。ええやん、いっくらでもこうてきたるで、すきなだけたべたらええやん、と僕はいった。僕は何にもしてあげられなかった。母にいい暮らしをさせてあげられなかった。こんな寒い家で1月の寒いときに一人で暮らさせていた。母の姿が消えていった。金の菊のレリーフが急に浮かび上がってきた。仏壇を凝視していたのだった。

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